ThinkPad X1 Carbon



ThinkPad X1 Carbon 5th (2017) を使っています。

この製品を選んだ経緯や、使い心地などを書いてみたいと思います。

仕様

プロセッサー|Core i5 7200U (2.5~3.1 GHz)
メモリ|LPDDR3-1866 8 GB
ストレージ|256 GB SSD (NVMe PCIe)
ディスプレイ|14" 1920×1080 ノングレア ノンタッチ sRGB 100%
インターフェース|USB 3.0 Type-A×2, USB 3.1 Gen 2 Type-C (Alt-Mode, USB PD, Thunderbolt 3 対応)×2, HDMI, LAN(専用端子), micro SD
本体寸法|323.5×217.1×15.95 mm
質量|1.13 kg

フォームファクター

製品を選ぶとき、まずピュアなクラムシェルであることが大前提でした。
こちら に書いているように、パーソナルコンピューターの本質を体現するのが、この形状だと思っているからです。
さらに普段持ち運ぶ持ちものや、以前使っていたVAIOをふまえて、フットプリントはA4程度、重さは1.3 kg以下としました。

X1 Carbon は、フットプリントはA4より長辺が2 cm程度長いもののほぼ同サイズ、重さは1.13 kgです。
いつも使っている紙のノートもA4で同じサイズ感なので(しかも黒い)、アナログの出力はノート、デジタルの出力は X1 Carbon、という使いわけが自然にでき、ともに持ち運ぶときも統一感があります。
大きさと重さのバランスもよく、とても軽快です。

筐体

製品名の通り、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)が天板に使われています。
大学院の研究でCFRPを扱っていることもあり、それだけでぐっときてしまいます。
実際にディスプレイパネルの剛性は非常に高く、ほとんどたわみません。

さらに本体はマグネシウム合金製です。
個人的に、マグネシウム合金はカサカサした手触りが好きではないのですが、X1 Carbon の場合はピーチスキンと呼ばれていた上質な塗装によって滑らかなものになっていて、軽金属の重量的なメリットだけを享受することができます。
この塗装は黒いのですが、無駄のないプロツールらしくて好きです。

全体的な形状はいわゆるくさび形ですが、見た目を薄くするためだけのものではなく、机から持ち上げる際に指を入れやすいなど、実用的なよさも感じます。
ディスプレイは180°開くことができ、画面を複数人で共有するときにとても役立ちます。
ヒンジのトルクが絶妙で、片手でディスプレイを開くことができ、さらに閉じるときのパタンという音が最高で、上質そのものです。
電源ボタンもカチッとしっかり押し込める上、使用中には長押ししない限りスリープに移行しないなど、本当に作りこみが丁寧です。

このように質実剛健さをそのまま具現化したようなThinkPadですが、遊び心も忘れていないところが素敵です。
天板のThinkPadロゴは「i」の点が赤く光るのですが、このためだけにフレキシブルケーブルがヒンジ側から上まで伸びているそうです。
スリープ中にゆるやかに点滅したり、電源接続時に短く点滅するなど実用的なインジケーターではありますが、わざわざこの位置に持ってくるあたりが憎いです。

ディスプレイ

Windowsのスケーリングは100%, 125%, 150%, ...と25%刻みでしか設定することができません。
カスタムスケーリングを使えば任意の拡大率を設定できますが、外づけディスプレイにも同じスケーリングが適用されてしまいます。
またソフトウェアによっては、スケーリングがうまくいかずに文字が小さくなってしまったり、ぼやけてしまったりと不便なことがあります。
特に計算に使う特殊なソフトウェアなどはスケーリングされないことが多いです。
つまり100%表示で無理なく使えることが重要でした。

VAIOは11.6インチ1920×1080でしたが、100%では常用できないほど表示が細かく、125%にスケーリングして使っていました。
実質的なピクセル密度はこれがちょうどよかったのですが、物理的なディスプレイサイズは小さいと感じていたので、ピクセル密度を保ったままより大きなディスプレイサイズとなるものを検討した結果、14インチ1920×1080にたどり着きました。
さらにタスクバー(ちなみに位置は上、ボタンは統合しない派です)を細くして、限界まで表示領域を広げて使っています。
余談ですが、Windows 10ではデフォルトでタスクバーに検索ボックスが居座っていますが、無駄に幅をとるのでボタン表示に切り替えることをお勧めします。
さらに言えば、Windowsボタンを押したあとそのまま文字を入力することで同じ操作ができるので、私は非表示にしています。

他に重視したのはタッチパネルを搭載しないこと、ノングレア仕上げであること、sRGBを100%カバーする色域を実現していることです。
タッチは個人的に不要だからいらないのですが、ノングレアについてはすべての製品が採用すべきだと思っているくらいこだわりたい仕様でした。
グレアは写真の見栄えがいいので...といったよく分からない理由で不採用になっている製品が多いのは残念です。
色域については、VAIOのそれが狭かったこともあり、信用できる色味のディスプレイが欲しかったためです。

X1 Carbon のディスプレイはこれらをすべて満たしています。

キーボード

さて、キーボードです。
X1 Carbon のキーボードは、ThinkPadの6段配列仕様です。
キーピッチ19 mm、キーストローク1.8 mmとスペックに現れるよさに加え、細かなよさがつまっています。

まずキートップの形状では、通常キーはくぼみがあり指のすわりがよく、さらにカーソルキーはフラット、スペースキー周辺のキーは盛り上がっているといった工夫により、指先だけでキーの種類が判別できるようになっています。

配列については、幅が狭められて窮屈な部分がなく、EscとDeleteキーが大きい、ファンクションキーに区切りがある、PgUp、PgDnキーが独立キーであるなど、独特ですが合理的です。

キーにガタつきがないことで、カチャカチャと音がしないだけでなく、確実な入力のフィードバックを返してくれるキーボードになっています。
普通のキーボードでは、キーを押したときキートップがスイッチに当たるまでの擬似的なストロークが紛れ込んでしまうため、押したつもりが押せていない、ということが起きてしまいますが、X1 Carbon ではその心配はありません。

以前はあまりできなかったタッチタイピングも自然にできるようになりました。

ポインティングデバイス

ThinkPadといえば、キーボードに加えてトラックポイントも外すことができない要素です。
キーボードのホームポジションから手を動かさずにポインターを動かせる利便性は、一度経験すると手放せなくなります。
ただ少し残念だったのは、標準の設定では動きに重さを感じたことです。
設定できる範囲で使いやすいカスタマイズができなかったため、フリーソフトでマウスの入出力カーブ自体を変更して使っています。
そちらの設定を詰めることで、非常に使いやすくなりました。
またクリック音もコクッと静かです。
欲を言えばもう少しストロークが深いとよりいいと思いますが、ボタンが独立しているだけで十分優れています。

さらにトラックパッドが非常に使いやすい点も、X1 Carbon の美点のひとつです。
Windows PC は長らくトラックパッドが使いにくいと言われ、実際Mac OSには大きく劣っていたと思います。
しかしWindows 10では、高精度タッチパッドという新しいしくみが導入され、これに準拠した製品では操作性が格段に向上しました。
ようやくWindowsでもトラックパッドがまともに使えるようになると歓喜していたのですが、意外にも準拠する製品は多くありません。
私が知る限りでは、国内メーカーではVAIOのみです。
トラックパッドにコストをかけない理由として、利用者がマウスを使うことを挙げるメーカーを見たことがありますが、これには非常に違和感を感じます。
トラックパッドが使いにくいからマウスを別途用意する人が多いわけで、順番が逆ではないか?と。

いずれにせよ、このトラックポイントとトラックパッドの組み合わせ(Ultra Naviという名前がついている)は最高の操作性を実現してくれます。
マウスは全く使わなくなりました。

インターフェース

インターフェースについては、USB Type-A と Type-C の数が同じであること、Thunderbolt 3 が使えることを条件にしました。
また2015年までの MacBook Pro のインターフェースは USB 3.0 ×2, HDMI, LAN, SD, Thunderbolt 2 ×2 でしたが、このバランスはいいと感じていました。
X1 Carbon はType-A と Type-C を2つずつ備え、さらに MacBook Pro とは LANが独自端子、SD が micro SD、Thunderbolt 2 が Thunderbolt 3 という対応関係の中ではありますが、同様のバリエーションとなっています。
その意味では意外にも、旧MBPユーザーの方の乗り換え先としてありかもしれません。
Airよりも小さく軽く速いが、旧Pro並みの拡張性、と言うとあながち悪い話ではないかも?

USB Type-C は USB 3.1 Gen 2、Thunderbolt 3 に加え、Alt-Mode、USB PDに対応するなど全部入りで、究極のインターフェースの風格です。
現状ではPDに対応していることが一番便利に感じていて、スマートフォンも X1 Carbon のACアダプターで充電することがあります。
スマートフォン付属のアダプター(15W)では出力が足りず、使用中は充電できませんが、スリープ中であればできているようなので、場合によっては非常にコンパクトな充電環境で運用することも可能です。

性能

購入したものは、X1 Carbon で選択できる中ではエントリー寄りの構成ですが、それでもかなり軽快に動いてくれます。
さほど重い処理をしないこともあり、動作に不満を感じたことはありません。
感心するのが、電源に接続して電源モードを最高パフォーマンスにすると、相当な負荷が続いてもターボブーストの上限クロックである3.09 GHzを維持することです。
しかもほとんどの場面でファンは止まっており、回転した時でもうるさくありません。
しかし排気口や吸気口に手を当ててみるとかなりの風量が流れていることがわかるなど、静かなのにもかかわらずダイナミックな冷却機構です。
ひとつだけ難点を挙げるとすれば、何故か起動が遅いです。
SATA SSD だった VAIO よりも5倍近くかかるのは予想外で残念です。
高速スタートアップを有効にすれば数秒で起動しますが、私の環境では再起動に時間がかかります。

追記:初期化したところ起動時間問題は解決しました。現在ではVAIOと同程度(約10秒未満)で起動できています。

また驚異的なのがバッテリー駆動時間です。
JEITA 2.0 で15hを実現していますが、実際にかなり持ちます。
スマートフォンよりバッテリー残量が減らないのには驚きました。
この領域になると、いわゆるいたわり充電の設定も現実的になってきます。
私の場合は80%で充電が停止するようにしています。
ちなみに先日例のリコールで点検に出しましたが、問題はなかったようで、すぐ戻ってきました。


以上、ThinkPad X1 Carbon 5th (2017) についてでした。
これからも相棒として大事に使っていきます。