発車標のDesignについてです。
発車標とは、駅で電車に乗る前に確認する、電車の行き先や時間が表示される電光掲示板のことです。
まずはじめに、駅構内のサインシステムの役割を整理することから始めました。
大きな分類としては、発車標、構内案内、駅名標に分けられます。
ちなみに駅名標とは、ホームに設置されている駅名が入った案内看板のことです。
発車標は「電車に乗る前」に確認するもの、構内案内は「電車に乗る前と降りた後」に確認するもの、駅名標は「電車から降りる前」に確認するものと整理しました。
次に、より具体的な電車に乗るまでの流れを整理してみました。
1. 改札に設置された発車標を見て、自分が乗りたい電車を確認する。
2. 構内案内を見て、乗りたい電車が到着するホームに行く。
3. ホームに設置された発車標を見て、間違いがないか確認する。
4. 電車が到着する。
5. 電車に乗る。
順により詳しく見ていきます。
1. ではどのような情報が必要なのでしょうか。
これについて考えるためには、場合分けをしなければなりません。
電車の種別ごとに考えます。
1.1 在来線
いわゆる普通の電車で、日常の足として利用するタイプです。
この場合、座席の予約などはしないので、駅に着いた段階ではどの電車に乗るのか決まっていないことも多いはずです。
これを踏まえると、必要な情報は重要な順番に
(1)種別
(2)行き先
(3)発車時刻
(4)のりば
となります。
上から発車順に電車の情報が並んでいるときに、まずその電車が自分が降りたい駅に停まる種別か確認し(1)、降りたい駅まで到達するのかを確認し(2)、発車時刻を確認し(3)、どののりばに行けばいいかを確認する(4)わけです。
その路線を利用しなれているかどうかで、(1)と(2)は入れ替わることもあるかと思いますが、今回は日常の利用者をメインに想定します。
1.2 在来線(指定席のある特急)
次に指定席があるタイプです。
この場合、指定席を予約している人と自由席を利用する人を分けて考える必要があります。
自由席の場合は在来線と基本的に同じですが、指定席の場合、乗る電車はすでに決まっているので、
(1)号数まで含めた列車名
(2)のりば
となります。
他の情報も併せて考えると、
(1)号数まで含めた列車名
(2)発車時刻
(3)行き先
(4)のりば
となります。
在来線とは(2)と(3)が入れ替わっていますが、在来線と特急は同じ改札なのでいずれかに合わせる必要があるでしょう。
1.3 新幹線
最後に新幹線です。
この場合、基本的には特急と同じように考えられますが、在来線とは別の改札であることを考えると、専用の表示ができるかもしれません。
(1)号数まで含めた列車名
(2)のりば
2. でホームにつきました。
3. を考えます。
ホームの発車標について、改札口のものに対してどのような情報が追加、あるいは削除されるべきでしょうか。
のりばの表示がいらない代わりに、編成の表示、これに伴って自由席の表示が必要となり、さらに停車駅の表示がより重要になります。
ホームのどの位置で待てばよいのか、特急の場合は自由席に乗るにはどの位置で待てばよいのか、降りたい駅に停車するのは間違いないのか、を確認する必要があるためです。
つまり整理すると次のようになります。
3.1 在来線
(1)種別
(2)行き先・停車駅
(3)発車時刻
(4)編成(停車位置)
3.2 在来線(指定席のある特急)
(1)種別
(2)発車時刻
(3)行き先・停車駅
(4)編成(停車位置)・自由席の位置
3.3 新幹線
(1)種別
(2)発車時刻
(3)行き先・停車駅
(4)編成(停車位置)・自由席の位置
さらに、そのホームがどの路線に属していて、どの方面に向かう列車が来るのかが分かれば、間違ったホームでずっと待ち続けるといった失敗を防ぐことができます。
また 4. と 5. では、電車の到着と出発に際し、注意すべきタイミングであることを知る必要があります。
以上が発車標に求められる情報ですが、さらにダイヤが乱れた場合にはその遅れの情報を知る必要があります。
こうした非常時の対応もあらかじめ考えておくといいのではないでしょうか。
長くなりましたが、いよいよ具体的な作業に入ります。
今回はホームの発車標をデザインしています。
さすがに何か実例がないとつまらないので、完成した Version 2.5.1 を例に説明します。
1. 在来線のみの停車ホームの例
2. 特急停車ホームの例
3. 新幹線ホームの例
形式は最近増えつつある、液晶ディスプレイを使ったLCD式としました。
グレーの部分が筐体で、黒い部分がLCDです。
直通運転が実施されている乗り入れ路線がある場合は、そちらも示しています。
また外国語表記について、最近導入が進みつつある日・英・韓・中の4か国語表示ではなく、日・英の2か国語表示を採用しました。
すべての表示に4か国語表示を行うことはスペース的に難しいこともありますが、そもそも母国語と世界共通語の英語以外を表示する必要性があるのか?という思いもあり、この仕様にしました。
英語の駅名は、一般的に日本語名をただローマ字表記したものが多いですが、今回は地名になっているものはローマ字表記、駅名独自のものは英語表記としました。
例えば「鹿児島中央駅」は一般に"Kagoshima-Chuo"ですが、中央という言葉は地名ではなく駅名としてのものなので、"Central-Kagoshima"と表記しています。
文字サイズは、すべての表示で英語が日本語のちょうど半分になるようにしています。
また日・英を表記する場合は、左揃えになるようにしています。
どちらの言語も左から右に読むので、言葉の始点が揃っている方が読みやすいためです。
LCD部については、左から順に
1. 在来線のみの停車ホーム
方向・種別・路線表示・行き先表示(駅ナンバリング・駅名)・発車時刻・編成
2. 特急停車ホーム
方向・種別・特急列車名・路線表示・行き先表示(駅ナンバリング・駅名)・発車時刻・編成
3. 新幹線ホーム
方向・種別・号数・発車時刻・路線表示・行先表示(所属路線・駅名)・編成(自由席)
大まかな順番は先ほどの考察に則っており、特急停車ホームは在来線に合わせた順番にしています。
日本語表示を基準とし、要素の高さを揃えて横一列に並べ、英語表記はあくまで補足として、必要な部分のみ下の段に併記しました。
LCD発車標では従来のLED型に比べて表示の自由度が飛躍的に高まるため、過剰な情報を画面の上下左右に分散して敷き詰めるようなタイプもあるのですが、かえってどこを見ればいいかわかりづらくなってしまっているものもあります。
そこで今回はLCDの高解像度の利点を生かしつつ、大まかなレイアウトはLED型を意識しました。
細かく見ていきます。
種別表示では、周囲は明るく視認性の高い色に、文字の背後は白い文字の視認性を保つために少し暗めの色を使っています。
路線表示では、その列車が通過する路線を色で示しています。乗り入れる路線があればその分色数が増えていきます。
最近では複雑な相互乗り入れが増えている印象があるので、それに対応できるようにしました。
行き先表示では、駅ナンバリングを含めた表示でわかりやすさを高めました。
駅ナンバリングは一般に外国人向けのものとされているようですが、数字を見れば電車が路線のどこまで行くものなのかがわかることから、日本人にとっても便利なものだと思っています。
ナンバリングのルールは独自に決めたもので統一しています。
アルファベットは原則一文字目が事業者、二文字目が路線名を表し、数字は1始まりです。
また例外として、空港行きの電車には空港のシンボルを示し、わかりやすさを向上させています。
先発の電車のみ、その下にすべての停車駅・乗換案内・(特急停車ホームでは自由席の案内)を表示します。
新幹線ホームは天井が高いことが多く、在来線より長距離を移動することから乗り間違いを防ぐため、先発・次発共に停車駅表示を行います。
実は発車標のデザインには高さの制限が大きく、各社で様々な工夫が施されているので、観察してみるとおもしろいと思います。
また、次発の電車の表示領域を使って電車の到着・発車を案内します。
ダイヤが乱れた場合は、変更された情報を赤字で示して明確に伝えます。
以上が今回の発車標Designの概要です。
アップデート
2018.03.23 発車標 Version 3.0
2018.06.20 発車標 Version 3.5
2020.05.04 発車標 Version 4.0
発車標とは、駅で電車に乗る前に確認する、電車の行き先や時間が表示される電光掲示板のことです。
まずはじめに、駅構内のサインシステムの役割を整理することから始めました。
大きな分類としては、発車標、構内案内、駅名標に分けられます。
ちなみに駅名標とは、ホームに設置されている駅名が入った案内看板のことです。
発車標は「電車に乗る前」に確認するもの、構内案内は「電車に乗る前と降りた後」に確認するもの、駅名標は「電車から降りる前」に確認するものと整理しました。
次に、より具体的な電車に乗るまでの流れを整理してみました。
1. 改札に設置された発車標を見て、自分が乗りたい電車を確認する。
2. 構内案内を見て、乗りたい電車が到着するホームに行く。
3. ホームに設置された発車標を見て、間違いがないか確認する。
4. 電車が到着する。
5. 電車に乗る。
順により詳しく見ていきます。
1. ではどのような情報が必要なのでしょうか。
これについて考えるためには、場合分けをしなければなりません。
電車の種別ごとに考えます。
1.1 在来線
いわゆる普通の電車で、日常の足として利用するタイプです。
この場合、座席の予約などはしないので、駅に着いた段階ではどの電車に乗るのか決まっていないことも多いはずです。
これを踏まえると、必要な情報は重要な順番に
(1)種別
(2)行き先
(3)発車時刻
(4)のりば
となります。
上から発車順に電車の情報が並んでいるときに、まずその電車が自分が降りたい駅に停まる種別か確認し(1)、降りたい駅まで到達するのかを確認し(2)、発車時刻を確認し(3)、どののりばに行けばいいかを確認する(4)わけです。
その路線を利用しなれているかどうかで、(1)と(2)は入れ替わることもあるかと思いますが、今回は日常の利用者をメインに想定します。
1.2 在来線(指定席のある特急)
次に指定席があるタイプです。
この場合、指定席を予約している人と自由席を利用する人を分けて考える必要があります。
自由席の場合は在来線と基本的に同じですが、指定席の場合、乗る電車はすでに決まっているので、
(1)号数まで含めた列車名
(2)のりば
となります。
他の情報も併せて考えると、
(1)号数まで含めた列車名
(2)発車時刻
(3)行き先
(4)のりば
となります。
在来線とは(2)と(3)が入れ替わっていますが、在来線と特急は同じ改札なのでいずれかに合わせる必要があるでしょう。
1.3 新幹線
最後に新幹線です。
この場合、基本的には特急と同じように考えられますが、在来線とは別の改札であることを考えると、専用の表示ができるかもしれません。
(1)号数まで含めた列車名
(2)のりば
2. でホームにつきました。
3. を考えます。
ホームの発車標について、改札口のものに対してどのような情報が追加、あるいは削除されるべきでしょうか。
のりばの表示がいらない代わりに、編成の表示、これに伴って自由席の表示が必要となり、さらに停車駅の表示がより重要になります。
ホームのどの位置で待てばよいのか、特急の場合は自由席に乗るにはどの位置で待てばよいのか、降りたい駅に停車するのは間違いないのか、を確認する必要があるためです。
つまり整理すると次のようになります。
3.1 在来線
(1)種別
(2)行き先・停車駅
(3)発車時刻
(4)編成(停車位置)
3.2 在来線(指定席のある特急)
(1)種別
(2)発車時刻
(3)行き先・停車駅
(4)編成(停車位置)・自由席の位置
3.3 新幹線
(1)種別
(2)発車時刻
(3)行き先・停車駅
(4)編成(停車位置)・自由席の位置
さらに、そのホームがどの路線に属していて、どの方面に向かう列車が来るのかが分かれば、間違ったホームでずっと待ち続けるといった失敗を防ぐことができます。
また 4. と 5. では、電車の到着と出発に際し、注意すべきタイミングであることを知る必要があります。
以上が発車標に求められる情報ですが、さらにダイヤが乱れた場合にはその遅れの情報を知る必要があります。
こうした非常時の対応もあらかじめ考えておくといいのではないでしょうか。
長くなりましたが、いよいよ具体的な作業に入ります。
今回はホームの発車標をデザインしています。
さすがに何か実例がないとつまらないので、完成した Version 2.5.1 を例に説明します。
1. 在来線のみの停車ホームの例
2. 特急停車ホームの例
3. 新幹線ホームの例
形式は最近増えつつある、液晶ディスプレイを使ったLCD式としました。
グレーの部分が筐体で、黒い部分がLCDです。
フォントはすべてIPAexゴシック(ボールド)に統一しました。
無料で利用できるものの中で好みだったためです。
後からヒラギノに似ているという意見も見つけましたが、そのくらい美しいですね。
ディスプレイ上部から順番に要素を見ていきます。
一番上には、ホームの属する路線と行き先の方面を示しました。
矢印でその発車標に対する電車の進行方向を表し、その方向の終着駅に最も近い主要駅を使って方面を表しています。
経由する主要な駅をその右に示し、最も需要が多い行き先が一目でわかるようにしています。
バーの色は路線に対応しています。直通運転が実施されている乗り入れ路線がある場合は、そちらも示しています。
また外国語表記について、最近導入が進みつつある日・英・韓・中の4か国語表示ではなく、日・英の2か国語表示を採用しました。
すべての表示に4か国語表示を行うことはスペース的に難しいこともありますが、そもそも母国語と世界共通語の英語以外を表示する必要性があるのか?という思いもあり、この仕様にしました。
英語の駅名は、一般的に日本語名をただローマ字表記したものが多いですが、今回は地名になっているものはローマ字表記、駅名独自のものは英語表記としました。
例えば「鹿児島中央駅」は一般に"Kagoshima-Chuo"ですが、中央という言葉は地名ではなく駅名としてのものなので、"Central-Kagoshima"と表記しています。
文字サイズは、すべての表示で英語が日本語のちょうど半分になるようにしています。
また日・英を表記する場合は、左揃えになるようにしています。
どちらの言語も左から右に読むので、言葉の始点が揃っている方が読みやすいためです。
LCD部については、左から順に
1. 在来線のみの停車ホーム
方向・種別・路線表示・行き先表示(駅ナンバリング・駅名)・発車時刻・編成
2. 特急停車ホーム
方向・種別・特急列車名・路線表示・行き先表示(駅ナンバリング・駅名)・発車時刻・編成
3. 新幹線ホーム
方向・種別・号数・発車時刻・路線表示・行先表示(所属路線・駅名)・編成(自由席)
大まかな順番は先ほどの考察に則っており、特急停車ホームは在来線に合わせた順番にしています。
日本語表示を基準とし、要素の高さを揃えて横一列に並べ、英語表記はあくまで補足として、必要な部分のみ下の段に併記しました。
LCD発車標では従来のLED型に比べて表示の自由度が飛躍的に高まるため、過剰な情報を画面の上下左右に分散して敷き詰めるようなタイプもあるのですが、かえってどこを見ればいいかわかりづらくなってしまっているものもあります。
そこで今回はLCDの高解像度の利点を生かしつつ、大まかなレイアウトはLED型を意識しました。
細かく見ていきます。
種別表示では、周囲は明るく視認性の高い色に、文字の背後は白い文字の視認性を保つために少し暗めの色を使っています。
路線表示では、その列車が通過する路線を色で示しています。乗り入れる路線があればその分色数が増えていきます。
最近では複雑な相互乗り入れが増えている印象があるので、それに対応できるようにしました。
行き先表示では、駅ナンバリングを含めた表示でわかりやすさを高めました。
駅ナンバリングは一般に外国人向けのものとされているようですが、数字を見れば電車が路線のどこまで行くものなのかがわかることから、日本人にとっても便利なものだと思っています。
ナンバリングのルールは独自に決めたもので統一しています。
アルファベットは原則一文字目が事業者、二文字目が路線名を表し、数字は1始まりです。
また例外として、空港行きの電車には空港のシンボルを示し、わかりやすさを向上させています。
先発の電車のみ、その下にすべての停車駅・乗換案内・(特急停車ホームでは自由席の案内)を表示します。
新幹線ホームは天井が高いことが多く、在来線より長距離を移動することから乗り間違いを防ぐため、先発・次発共に停車駅表示を行います。
実は発車標のデザインには高さの制限が大きく、各社で様々な工夫が施されているので、観察してみるとおもしろいと思います。
また、次発の電車の表示領域を使って電車の到着・発車を案内します。
ダイヤが乱れた場合は、変更された情報を赤字で示して明確に伝えます。
以上が今回の発車標Designの概要です。
アップデート
2018.03.23 発車標 Version 3.0
2018.06.20 発車標 Version 3.5
2020.05.04 発車標 Version 4.0